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うつ病になっても日々生き生き「寄り添う」研究

三村 將 (Masaru MIMURA)
うつ病の治療は近年急速な発展を遂げていますが、当事者のウェルビーイングなどの主観的満足感の改善という観点では課題が残っています。うつ病研究の主要アウトカムには抑うつ症状の重症度が用いられていますが、抑うつ症状の寛解後にも睡眠障害や不安などの他の症状が残存し、ウェルビーイングの低下が持続していることが知られています。また、うつ病寛解患者では、残遺症状やウェルビーイングの低下が再発リスクとなることも知られており、うつ病寛解後のwell-being向上のために機能障害評価に注目が集まっています。海外では症状、機能障害、ウェルビーイングの複合的な評価を可能にする尺度や技術の開発が試みられていますが、未だ広く実用化されているものはありません。
そのため、本研究開発課題では、うつ病寛解後の抑うつ以外の症状や機能障害、ウェルビーイングを定量化する技術を開発し、残遺症状を改善し、ウェルビーイングまで回復することを目指したシステムを構築することを計画しています。
研究開発メンバー
・岸本 泰士郎(慶應義塾大学 医学部 医科学研究連携推進センター 教授)
・篠田 浩一 (東京科学大学 情報理工学院 教授)
・杉原 玄一 (東京科学大学 大学院 医歯学総合研究科 准教授)
・髙橋 英彦 (東京科学大学 大学院 医歯学総合研究科 教授)
参画機関
慶應義塾大学、東京科学大学、東京都、神奈川県、川崎市、豊島区、参画企業
認知症になっても日々生き生き「寄り添う」研究

三村 將 (Masaru MIMURA)
認知症患者は今後さらに増加することが予測され、患者の生活上の困難の解決は重要な課題です。患者特有の障害された機能や症状に焦点をあてると同時に、患者本人の主体価値に基づいた生活課題の特定と、本人の持つ経験や知恵をいかすための対応が求められますが、個々の主体価値に即した対応は介護者の技量に依存しており、一部の介護の専門家や家族しか行えていません。
本研究開発課題では生活機能を客観的に評価し、主体価値に配慮した生活課題を自動的に抽出し、さらには抽出された生活課題を解決する民間サービスの開発や普及を促進する基盤を整備します。
認知症患者の生活機能の評価と、主体価値を反映した課題の抽出を自動化する試みは世界的にみても画期的であり、我々は詳細な生活機能評価とチャットボットなどを用いた対話を組み合わせることによって達成可能であると考えています。言語情報などの生活データを記録することに対して、患者が心理的抵抗を示すことが予想されますが、自由会話ではなくチャットボットなどを使用した会話に記録データを限定することで解決されると考えます。社会実装にあたっては認知症であっても扱えるように技術的工夫を施します。
研究開発メンバー
・岸本 泰士郎(慶應義塾大学 医学部 医科学研究連携推進センター 教授)
・堀田 聰子 (慶應義塾大学 大学院 健康マネジメント研究科 教授)
・秋山 泰 (東京科学大学 情報理工学院 教授)
・朝田 隆 (東京科学大学 客員教授)
・小竹 元基 (東京科学大学 工学院 教授)
・髙橋 英彦 (東京科学大学 大学院 医歯学総合研究科 教授)
・髙橋 将記 (東京科学大学 リベラルアーツ研究教育院 准教授)
・西田 佳史 (東京科学大学 工学院 教授)
・松尾 浩一郎(東京科学大学 大学院 医歯学総合研究科 教授)
・大武 美保子(理化学研究所 革新知能統合研究センター チームディレクター)
参画機関
慶應義塾大学、東京科学大学、理化学研究所、東京都、神奈川県、川崎市、豊島区、参画企業
脳卒中になっても日々生き生き「寄り添う」研究

家田 真樹 (Masaki IEDA)
厚生労働省循環器病対策推進基本計画では循環器病年齢調整死亡率の減少がうたわれ、心疾患/脳血管障害に対する予防・治療推進は喫緊の課題であり、達成のために心臓、動脈硬化を見守ることが大切です。心疾病は発作的なことも多く健診のみでは不十分であり新たな解決法が求められています。 Apple Watchの心電図アプリが医療機器として承認されたことにより、誰もが心電図を記録でき、かつ、様々なヘルスケアデータが無意識の内に収集されます。さらに血液検査や血圧等と統合したPHRの集積/解析により個々人に最適化されたリスク層別化が可能になります。
慶應義塾大学ではApple Watchによるライフログを収集する臨床研究を現在行っており、さらに医療情報(ゲノム、生活習慣、microRNA、フリーRNA等バイオマーカ、12誘導心電図)から将来生じる心房細動を予測する研究が東京科学大学にて行われています。これらが連携することにより、医療情報に基づくリスクの層別化とウェアラブルデバイスのセンシング技術による見守りサービスを提供することで、国民、家族に対して健康DXを提供するのが本研究開発課題の目的です。
研究開発メンバー
・辻 哲也 (慶應義塾大学 医学部 リハビリテーション医学 教授)
・中原 仁 (慶應義塾大学 医学部 内科学(神経)教授)
・笹野 哲郎(東京科学大学 大学院 医歯学総合研究科 教授)
・古川 哲史(東京科学大学 執行役副理事(総合戦略立案)/ 執行役副学長(研究・産学連携))
参画機関
慶應義塾大学、東京科学大学、東京都、神奈川県、川崎市、豊島区、参画企業
心不全になっても日々生き生き「寄り添う」研究

勝俣 良紀 (Yoshinori KATSUMATA)
高齢化に伴い心不全患者は世界的に増加し、本邦でも現在約100万人に達し、今後さらに増加することが予想されています。これまで発症/重症化に対する予防、リスクに応じた介入が推し進められ、生体情報モニタリング技術向上、ウェアラブル端末による遠隔管理導入、効率的定量的なQOL評価を可能とした疾患特異的患者アウトカム(patient-reported outcome [PRO])調査項目が開発されてきましたが、社会実装には至っていません。また、質の高い心臓リハビリテーションが生涯にわたって継続できる環境の整備、システム構築が必要とされています。
本研究開発課題では、これらの膨大なデータを統合・解析することで新たなサービスを開発し、心臓リハビリテーションの継続を加速させる社会実装を実現します。
研究開発メンバー
・川上 途行(慶應義塾大学 医学部 リハビリテーション医学 准教授)
・辻 哲也 (慶應義塾大学 医学部 リハビリテーション医学 教授)
・三宅 美博(東京科学大学 データサイエンス・AI全学教育機構 特任教授)
参画機関
慶應義塾大学、東京科学大学、東京都、神奈川県、川崎市、豊島区、参画企業
腎不全になっても日々生き生き「寄り添う」研究

林 香 (Kaori HAYASHI)
人口の高齢化を背景に慢性腎臓病は増加しており、また腎臓病があると全身の老化が進行することが示唆されています。本研究では、腎臓を起点とする諸臓器の老化進行状態を検出・予測するアルゴリズムを開発することで、慢性腎臓病の病態の多様性を把握し、さらに老化進展のトラジェクトリー(進行速度、障害臓器)を層別化したいと考えています。同時に食物摂取頻度調査を行い、老化状態に関連する栄養素を探索することで、老化の進行速度を抑えるような、個人に合った食事を提案できる基盤を構築することを目指します。
研究開発メンバー
・畔上 達彦 (慶應義塾大学 医学部 内科学(腎臓内分泌代謝) 専任講師)
プロジェクトリーダー推進課題
概要 精神疾患の回復や再発予防のためのソリューション開発を目指したWEB面接フォローアップによるデータベース構築を進めます。
概要 日々の暮らしのなかの小さな喜ぴ”マイクロハピネス"の伝播効果を誘発するアルリズムを開発し、自治体などと協力し地域における支援に活用します。生活機能を踏まえて他の認知症高齢者のエピソードから新しい体験を提案することを目指します。
概要 認知機能が低下した人における栄養の偏り、食事における困難・満足度を把握し、認知機能プロファイルによる摂取栄養素の偏りや、食事の困りごとのパターンの予測機を開発するとともに、各パターンに合致するサプリや食材、調理済み食品の提供等を通してこれらの困りごとの解決を図ります。
概要 心不全患者の歩行の特徴を抽出し、患者の歩行をサポートしてQOLの向上が可能になるようなシステムを開発します。
概要 訪問看護サービスを利用しながら在宅療養生活を送っている人は全国で80万人以上おられます。在宅ケアに必要な技術をデジタル化して普及していきます。療養者ら発の情報を記録して、ケア提供者でも共有できるアプリはありません。電子在宅ケアノートを開発、実装を目指します。
概要 肝細胞がんは、継続的な治療を要するため、運動療法により体力低下を予防することが重要ですが、個人にあった運動メニュー作成や運動継続のサポートが課題となっています。脂肪肝、肝硬変、肝がん患者それぞれに最適な運動を提供します。
概要 住居や施設における高齢者の転倒や入浴事故の早期発見と早期介入を実現するシステムを実現します。レーダーセンサーによる転倒検出、バイタルサインから悪化予測を行うアルゴリズムを開発しています。
概要 喘息は診断基準がなく治療しても症状が残っている人が少なくありません。喘息症状の因子となっている生活環境を明らかにして、診療の質の向上からセルフケアを促進します。
※研究開発メンバーの氏名は所属ごとに五十音順で掲載しています。