R&D Theme
研究開発課題 1
一人ひとりに寄り添う社会システムづくり
白坂 成功 (Seiko SHIRASAKA)
本研究開発課題では、拠点ビジョンの実現を目指した社会システムの全体像を描き、適切な設計・社会実装を行います。全体として創発的な機能を発揮することができるようデータをつなぎ、複数の異なる企業が、業種を越え連携するビジネス・エコシステム(生態系)を形成し、人と社会に価値を提供することを実現できる仕組みを設計し、社会に開かれたヘルスケアの実現を目指します。本研究開発課題の成果は、本拠点構想のもとに連なる全ての研究開発課題の成果がつながるよう、全体を適切にデザインする役割を担います。
一方、個人への影響のみならず、広く社会全体にどのような影響を与えるかを分析する必要があります。社会は様々な要素が複雑に関係しあっており、ポジティブな影響と共にネガティブな影響も起こりうることから、各研究開発課題が社会に与える影響解析結果を全体設計に反映させます。さらにエコシステムの形成には資金・人材・データの循環が不可欠であるため、これに関わる金融、事業会社、自治体を含めた本拠点の多様なステークホルダーを接続します。これらは決められた研究開発課題の範囲でおこなわれるだけでなく、今後生まれる新たなニーズに対しても活用できるような方法の開発も実施していきます。
研究開発メンバー
・大屋 雄裕 (慶應義塾大学 法学部 教授)
・岸本 充 (慶應義塾大学 グローバルリサーチインスティテュート 特任教授)
・鳥谷 真佐子(慶應義塾大学 グローバルリサーチインスティテュート 特任教授)
・宮田 裕章 (慶應義塾大学 医学部 医療政策・管理学 教授)
・武部 貴則 (東京医科歯科大学 統合研究機構 教授)
・井原 雅行 (理化学研究所 情報統合本部 チームリーダー)
・仙石 愼太郎(東京工業大学 環境・社会理工学院 教授)
参画機関
慶應義塾大学、東京医科歯科大学、理化学研究所、東京工業大学、東京都、神奈川県、川崎市、豊島区、参画企業
研究開発課題 2
サイエンスナレッジ・データ基盤の構築
桜田 一洋 (Kazuhiro SAKURADA)
本研究開発課題では、病院、介護施設、IT企業などに散在している、診療データ(病名、診療録、検体検査、画像報告書および検査画像、処方、注射等)、治療後のデータ(介護施設の記録、家庭等のセンサデータ等)を統合し、専門家による高度な解析に利用できるサイエンスナレッジ・データ基盤を構築します。このデータ基盤は、個人情報を適切に保護するために仮名加工された情報を中心として構成されます。また機械学習や深層学習を用いた解析精度をあげるため、特徴量エンジニアリングに代表されるデータ加工の方法や、健康医療の課題解決に適したアルゴリズムの選択方法などのデータサイエンスの技術を利用者に提供します。
各研究開発課題で得られた疾患予測モデルなどの成果は再現性・信頼性を検証した後にヘルスコモンズネットワークに組み込み、利用者に適切なタイミングで適切なフィードバックを行い、病気になっても社会とつながりを保ち、安心して暮らすことができる社会基盤へと応用することを目指してしています。
研究開発メンバー
・陣崎 雅弘(慶應義塾大学 医学部 放射線科学(診断)教授/大学病院 副病院長)
・武林 亨 (慶應義塾大学 医学部 衛生学公衆衛生学 教授)
・藍 真澄 (東京医科歯科大学病院 教授)
・高橋 邦彦(東京医科歯科大学 M&Dデータ科学センター 教授)
・井原 雅之(理化学研究所 情報統合本部 チームリーダー)
・岡田 随象(理化学研究所 生命医科学研究センター チームリーダー)
・川上 英良(理化学研究所 情報統合本部 チームリーダー)
・橋田 浩一(理化学研究所 革新知能統合研究センター チームリーダー)
・横手 靖彦(理化学研究所 情報統合本部 チームリーダー)
・石田 貴士(東京工業大学 情報理工学院 准教授)
参画機関
慶應義塾大学、東京医科歯科大学、理化学研究所、東京工業大学、東京都、神奈川県、川崎市、豊島区、参画企業
研究開発課題 3
うつ病になっても日々生き生き「寄り添う」研究
三村 將 (Masaru MIMURA)
うつ病の治療は近年急速な発展を遂げていますが、当事者のウェルビーイングなどの主観的満足感の改善という観点では課題が残っています。うつ病研究の主要アウトカムには抑うつ症状の重症度が用いられていますが、抑うつ症状の寛解後にも睡眠障害や不安などの他の症状が残存し、ウェルビーイングの低下が持続していることが知られています。また、うつ病寛解患者では、残遺症状やウェルビーイングの低下が再発リスクとなることも知られており、うつ病寛解後のwell-being向上のために機能障害評価に注目が集まっています。海外では症状、機能障害、ウェルビーイングの複合的な評価を可能にする尺度や技術の開発が試みられていますが、未だ広く実用化されているものはありません。
そのため、本研究開発課題では、うつ病寛解後の抑うつ以外の症状や機能障害、ウェルビーイングを定量化する技術を開発し、残遺症状を改善し、ウェルビーイングまで回復することを目指したシステムを構築することを計画しています。
研究開発メンバー
岸本 泰士郎(慶應義塾大学 医学部 ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座 特任教授)
満倉 靖恵 (慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学 教授)
髙橋 英彦 (東京医科歯科大学 大学院 医歯学総合研究科 教授)
松尾 浩一郎(東京医科歯科大学 大学院 医歯学総合研究科 教授)
篠田 浩一 (東京工業大学 情報理工学院 教授)
参画機関
慶應義塾大学、東京医科歯科大学、東京工業大学、東京都、神奈川県、川崎市、豊島区、参画企業
研究開発課題 4
認知症になっても日々生き生き「寄り添う」研究
三村 將 (Masaru MIMURA)
認知症患者は今後さらに増加することが予測され、患者の生活上の困難の解決は重要な課題です。患者特有の障害された機能や症状に焦点をあてると同時に、患者本人の主体価値に基づいた生活課題の特定と、本人の持つ経験や知恵をいかすための対応が求められますが、個々の主体価値に即した対応は介護者の技量に依存しており、一部の介護の専門家や家族しか行えていません。
本研究開発課題では生活機能を客観的に評価し、主体価値に配慮した生活課題を自動的に抽出し、さらには抽出された生活課題を解決する民間サービスの開発や普及を促進する基盤を整備します。
認知症患者の生活機能の評価と、主体価値を反映した課題の抽出を自動化する試みは世界的にみても画期的であり、我々は詳細な生活機能評価とチャットボットなどを用いた対話を組み合わせることによって達成可能であると考えています。言語情報などの生活データを記録することに対して、患者が心理的抵抗を示すことが予想されますが、自由会話ではなくチャットボットなどを使用した会話に記録データを限定することで解決されると考えます。社会実装にあたっては認知症であっても扱えるように技術的工夫を施します。
研究開発メンバー
・岸本 泰士郎(慶應義塾大学 医学部 ヒルズ未来予防医療・ウェルネス共同研究講座 特任教授)
・堀田 聰子 (慶應義塾大学 大学院 健康マネジメント研究科 教授)
・満倉 靖恵 (慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学 教授)
・朝田 隆 (東京医科歯科大学 客員教授)
・岩田 隆紀 (東京医科歯科大学 教授)
・髙橋 英彦 (東京医科歯科大学 大学院 医歯学総合研究科 教授)
・大武 美保子(理化学研究所 革新知能統合研究センター チームリーダー)
・秋山 泰 (東京工業大学 情報理工学院 教授)
・篠田 浩一 (東京工業大学 情報理工学院 教授)
・髙橋 将記 (東京工業大学 科学技術創成研究院/リベラルアーツ研究教育院 准教授)
・西田 佳史 (東京工業大学 工学院 教授)
参画機関
慶應義塾大学、東京医科歯科大学、理化学研究所、東京工業大学、東京都、神奈川県、川崎市、豊島区、参画企業
研究開発課題 5
脳卒中になっても日々生き生き「寄り添う」研究
家田 真樹 (Masaki IEDA)
厚労省循環器病対策推進基本計画では循環器病年齢調整死亡率の減少がうたわれ、心疾患/脳血管障害に対する予防・治療推進は喫緊の課題であり、達成のために心臓、動脈硬化を見守ることが大切です。心疾病は発作的なことも多く健診のみでは不十分であり新たな解決法が求められています。 Apple Watchの心電図アプリが医療機器として承認されたことにより、誰もが心電図を記録でき、かつ、様々なヘルスケアデータが無意識の内に収集されます。さらに血液検査や血圧等と統合したPHRの集積/解析により個々人に最適化されたリスク層別化が可能になります。
慶應大ではApple Watchによるライフログを収集する臨床研究を現在行っており、さらに医療情報(ゲノム、生活習慣、microRNA、フリーRNA等バイオマーカ、12誘導心電図)から将来生じる心房細動を予測する研究が東京医科歯科大にて行われています。これらが連携することにより、医療情報に基づくリスクの層別化とウェアラブルデバイスのセンシング技術による見守りサービスを提供することで、国民、家族に対して健康DXを提供するのが本研究開発課題の目的です。
研究開発メンバー
・辻 哲也 (慶應義塾大学 医学部 リハビリテーション医学 教授)
・中原 仁 (慶應義塾大学 医学部 内科学(神経)教授)
・笹野 哲郎(東京医科歯科大学 大学院 医歯学総合研究科 教授)
・古川 哲史(東京医科歯科大学 教授/理事)
参画機関
慶應義塾大学、東京医科歯科大学、東京都、神奈川県、川崎市、豊島区、参画企業
研究開発課題 6
心不全になっても日々生き生き「寄り添う」研究
勝俣 良紀 (Yoshinori KATSUMATA)
高齢化に伴い心不全患者は世界的に増加し、本邦でも現在約100万人に達し、今後さらに増加することが予想されています。これまで発症/重症化に対する予防、リスクに応じた介入が推し進められ、生体情報モニタリング技術向上、ウェアラブル端末による遠隔管理導入、効率的定量的なQOL評価を可能とした疾患特異的患者アウトカム(patient-reported outcome [PRO])調査項目が開発されてきましたが、社会実装には至っていません。また、質の高い心臓リハビリテーションが生涯にわたって継続できる環境の整備、システム構築が必要とされています。
本研究開発課題では、これらの膨大なデータを統合・解析することで新たなサービスを開発し、心臓リハビリテーションの継続を加速させる社会実装を実現します。
研究開発メンバー
・辻 哲也 (慶應義塾大学 医学部 リハビリテーション医学 教授)
・満倉 靖恵(慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学 教授)
・三宅 美博(東京工業大学 情報理工学院 教授)
参画機関
慶應義塾大学、東京工業大学、東京都、神奈川県、川崎市、豊島区、参画企業
研究開発課題 7
SDGs の観点から各課題のデータの整理・統合・評価
蟹江 憲史 (Norichika KANIE)
本研究開発課題は、2030アジェンダが強調するところの「一体で不可分」な統合的目標としての17目標169ターゲットにおいて、統合的達成を実現するために投資行動やそのインパクト評価を含むレバレッジポイントを明らかにすることにより、本事業全体について、SDGs達成という観点からのデータとエビデンスに基づきバックキャストの視点から進捗評価を行います。さらに、投資による経済変革を含む、社会システム全体として、SDGs達成を実現するための方策を明らかにし、拠点ビジョンを実現するための管理を行います。
また、サイエンスナレッジ・データ基盤の整備により、活動の進捗はデータとして可視化が可能となるため、これらのデータについて、SDGs達成へ向けて、持続可能な社会へ向けた変革の具体的提案と実装を行います。評価を行動へと結びつけ、社会システムの変革へと結びつけるための共通言語としてのSDGsの役割と、バックキャスティング型のデータ分析ツールとしてのSDGsの活用という二つの側面からSDGsを利用して本事業をすすめ、さらには国連GSDR1 への反映やSDSN2 を通じた国際発信を行い、「ポストSDGs」のターゲット形成へ向けた国際議論をリードしていきます。
1 GSGR; Global Sustainable Development Report
2 SDSN; Sustainable Development Social Network
研究開発メンバー
・岡田 英史 (慶應義塾大学 常任理事(社会・地域連携・SDGs担当))
・岸本 充 (慶應義塾大学 グローバルリサーチインスティテュート 特任教授)
・藤原 武男 (東京医科歯科大学 大学院 医歯学総合研究科 教授)
・井原 雅行 (理化学研究所 情報統合本部 チームリーダー)
・仙石 愼太郎(東京工業大学 環境・社会理工学院 教授)
・山口 雄輝 (東京工業大学 生命理工学院 教授)
参画機関
慶應義塾大学、東京医科歯科大学、理化学研究所、東京工業大学、東京都、神奈川県、川崎市、豊島区、参画企業
※研究開発メンバーの氏名は所属ごとに五十音順で掲載しています。